遺言とは

遺言とは、遺言を作る人(遺言者)が、自分の死後の法律関係(財産、身分など)を、一定の方式に従って定める、最終的な意志表示のことです。

わかりやすく言うと、自分が死んだ時に、「財産を誰々に遺す」とか、「実は隠し子がいた」とかいったことを、死ぬ前に書いて遺しておくことです。

注意しなければならないのは、遺言の方式は法律で定められているので、それに違反する遺言は無効になってしまうということです。

遺言は死ぬ前であれば、いつでも本人の意志で自由に変更(撤回)することができます。

もちろん変更(撤回)するときも、法律上の決まりを守らなければいけません。

遺言で定めることが出来る内容も法律で決まっていますので、それ以外の事柄について定めても何の効力もありません。

遺言で定められるのは、自分が持っている権利の範囲内のみということです。

なぜ遺言は必要なのか?

遺言とは、「人の最終意思に、死後の法的効果を認めて、その実現を保証する制度」です。

家庭裁判所に持ち込まれる相続争いの多くは、正式な遺言書がないためだといわれています。

長きにわたり一生懸命働いて築いた財産をめぐって、遺された肉親同士が遺産争いを繰り広げるようでは天国にいる故人もやりきれないものでしょう。

子孫の幸福のためになるべき遺産が、骨肉の争いを引き起こし、不幸の原因になってはたまりません。

財産のある人は、生前に自分の財産の状況とその分配方法等を定めた遺言を作成するべきです。

遺言は、遺産をめぐるトラブルを防ぐ最善の方法であるとともに、遺産を遺された家族のための出発点でもあります。

また、遺すのが借金だけだという場合でも、遺された家族が法的な手続(相続放棄)により借金の返済義務を負わなくてすむよう、その内容を遺言というかたちで書き遺しておきたいものです。

遺言で出来る事とは?

遺言で出来る事柄は法律で定められている一定の事項に限られます。
(1)狭義の相続に関する事項
  ・相続人の排除・取消し 
  ・相続分の指定・指定の委託 
  ・特別受益の持戻しの免除 
  ・遺産分割の方法指定・指定の委託 
  ・遺産分割の禁止 
  ・相続人相互の担保責任の減免・加重 
  ・遺留分侵害額の負担順序の指定

(2)遺産の処分に関する事項
  ・遺贈 
  ・財団法人設立のための寄付行為 
  ・信託の設定 

(3)身分上の事項
  ・認知 
  ・未成年者の後見人の指定 
  ・後見監督人の指定 

(4)遺言執行に関する事項
  ・遺言執行者の指定・指定の委託 

(5)その他認められている事項
  ・祖先の祭祀主宰者の指定
  ・生命保険金受取人の指定・変更

遺言書を作成すべきケース

 以下のようなケースでは、遺言書を作成することを強くおすすめします。

法定相続分と異なる配分をしたい場合相続人それぞれの生活状況などに考慮した財産配分を指定できます。
遺産の種類・数量が多い場合遺産分割協議では、財産配分の割合では合意しても、誰が何を取得するかについては(土地・株式・預貯金・現金など色々な種類の財産があります)なかなかまとまらないものです。遺言書で指定しておけば紛争防止になります。
配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合配偶者と義理の兄弟姉妹との協議は、なかなか円満には進まないものです。遺言書を作成することにより、すべて配偶者に相続させることができます。
農家や個人事業主の場合相続によって事業用資産が分散してしまっては、経営が立ち行かなくなります。このような場合も遺言書の作成が有効です。
相続人以外に財産を与えたい場合 ※遺言書がなければ不可能と考えてください。内縁の配偶者、子の配偶者(息子の嫁など) 生前特にお世話になった人や団体 公共団体などへの寄付
その他遺言書を作成すべき場合  子供がいない夫婦 先妻と後妻のそれぞれに子供がいる 配偶者以外の者との間に子供がいる(婚外子) 相続人の中に行方不明者や浪費者がいる 相続人同士の仲が悪い

遺言の種類

~ 法律に定める方式以外の遺言は無効です。 ~

  民法によれば、遺言は、この法律(民法)に定める方式に従わなければ、これをすることができない。と規定されています。

つまり、民法の規定に従わない遺言書は有効とは認められないということです。

民法では普通方式の遺言として、以下の3つを規定しています。

自筆証書遺言  遺言者が、遺言内容の全文・日付・氏名を自分で書いた上で押印します。(財産目録等一部の書類はパソコンでの作成が可能、コピーの添付が可能な書類もあり)これらが欠けたものは無効となります。 問題点としては、法律的に間違いのない文章を作成することはなかなか困難なことですし、保管上の問題もあります。法務局で保管されていたものを除き、遺言執行の際には家庭裁判所で「検認手続」をしなければなりません。よく筆跡鑑定などで真実性が争われているのが、この遺言書です。
秘密証書遺言  遺言者が署名・押印した遺言書を封印して公証人に提出します。自筆証書遺言と違い、本文は自筆でなくても構いません。やはりこの方式の遺言書も、内容の正確さの問題や検認手続の問題があります。
公正証書遺言  証人2人以上の立会いのもと、遺言の内容を公証人に伝え、筆記してもらった上で読み聞かせてもらいます。その筆記に間違いがないことを確認した上で署名・押印します。この方式の遺言書が一番おすすめできるものです。

家庭裁判所の検認とは

公正証書遺言と法務局で保管されている自筆証書遺言以外の遺言は、遺言の執行前に、家庭裁判所の「検認」を受けなければなりません。

「検認」とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など「検認」の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。

結局どの遺言書の方式を選んだらいいの

~ 安全・安心・確実な遺言書 ~

公正証書遺言には、次のような利点があります。

1.原本が公証役場に保管されるため、紛失や偽変造の恐れがありません。

2.家庭裁判所における検認手続が不要です。

3.法律の専門家である公証人が作成しますので、内容に間違いがありません。

遺言書のまとめ

ここまで見てきたように、遺言書の作成には法律上のルールや気を付けなければならないことが多数あります。ご自身の意思を後世に残し、望んだ通りの内容を実現させるためにも有効で争いの無いしっかりとした遺言書を作成することが重要です。弊所ではご本人のお気持ちやご家族の事情などをじっくりとお伺いし、法的視点も踏まえて客観的立場からアドバイスさせていただきますのでお気軽にご相談ください。